教員紹介教員紹介

TEACHER

造形学部 建築学科
准教授
栗原 健太郎 Kentaro Kurihara
商・住空間デザイン、建築設計
建築に限らず、たとえば森も「空間」であり「環境」です。空間や環境について考えましょう。
栗原 健太郎

プロフィール

所属
造形学部 建築学科
造形学研究科 建築学専攻
役職・職名
准教授
最終学歴
工学院大学大学院 工学研究科 建築学専攻 修了
学位
修士(工学)
所属学会
日本建築学会、日本建築家協会(JIA)、日本建築設計学会
研究テーマ
建築における兼用性に関する研究

研究・活動紹介

建築設計実務:愛知産業大学 言語・情報共育センター(PLASU)

「建築を外の密度に近づける」
語学学習・IT・プレゼン・バス待合・ラウンジ等のスペースが入る大学施設。敷地は4m
高低差の崖が中央に走り分断されていたので、それを緩やかな芝生の丘陵地にすることか
ら始まる。敷地面積約3500㎡に対して必要な機能は廊下を除くと約500㎡であった。これ
を1つの建築ボリュームで置くと、構内道路に近接する配置に限定されるだけでなく、約
7倍もある大きな外部空間との対比により場所の一体性が損なわれるため、「内と外」の関
係が反復されるように機能を 4 つのヴォリュームに分けて敷地全体に分散配置した。高低
差をならすにあたっては、敷地境界 4 辺の既存レベルと擦り合うように繋ぎながら途中途
中の場所で家具が置けるフラットな場所や寝そべれる急勾配の場所など、どの程度削って
どこに盛り土するかを検討しながら約50m×70mの大きさの丘に幾つもの小さな状況をつ
くっていった。均質に近い柱径やスパンの中にランダムなランドスケープや大小様々な庭
が重なることで公園とも建築ともなるような自由な場ができればと考えている。

建築設計実務:愛知産業大学 言語・情報共育センター(PLASU)

外観

建築設計実務:愛知産業大学 言語・情報共育センター(PLASU)

平面図

建築設計実務:美浜町営住宅 河和団地

「積層団地から平屋木造団地へ」

愛知県知多郡美浜町に建つ町営団地の建て替え計画。
10棟からなる河和団地は、そのうち耐用年数を経過したPC造2階建ての6棟が対象となり
今回は第1期としてその中で3棟が解体し建替えられた。
1950年代に建設が始まった積層型の団地は、縮小化が進む現代の日本にはオーバースペックであり
空室が目立つようになってきていたため、
建替えに当たっては住戸数を減らす代わりに地面に近くて子育てしやすく
高齢者にも対応できる生活の場を用意しようということになった。
美浜町は細長い知多半島の先端近くに位置し海辺の好環境にあるものの
都市圏から離れている立地もあって近年は県平均を上回る人口減少に悩まされており
子育て世代の支援や町外から移り住みによってそれに歯止めをかけたいという町としての願いもあった。
敷地内を抜ける路地には各々の棟の大きな軒が掛かり、プライベートな領域とパブリックな領域をあいまいにしている。
路地に対して周る縁側は路地から内部空間に距離をつくりながら隣人を迎える玄関先にもなる。
対角線上にコア(個室,水回り)を持つ4方開放のリビングと縁側とを連続させ内部の生活が外に溢れ人との関わり合いを持ちやすくすることで
積層団地に生まれにくかった内側の生活と外との関係を緩やかに溶かし戸建て住宅と集合住宅が混ざったような環境にできたらと思う。
居住者が高齢化・定住化する団地にあって、いま10世帯中、子育て世帯が8家族、町外からの移住世帯が1家族住んでいる。
入居から3か月が経った先日、団地に立ち寄った。
女の子が庭で赤ちゃんを抱っこしてあげていたが、それが隣のお宅の赤ちゃんだと後から知った。
敷地内の2軒の家族同士(お母さん2人と小学生3人)が1軒に集まりちょうど遅めのランチを食べるところだという。
そのうち1人の女の子がお母さんに頼まれて多めに作った茶碗蒸しを1軒先の別の家族に届けに行った。
軒下の路地であるお宅のお母さんと話をしていたら別のお宅の男の子が小っちゃい自転車でその間を走り抜ける。
大きな軒下と既存団地の隙間を縫って、海風とともに新しい世帯の子供たちの声が吹き抜けていく。

建築設計実務:美浜町営住宅 河和団地

俯瞰外観

建築設計実務:美浜町営住宅 河和団地

アイレベル外観

建築設計実務:山王のオフィス

愛知県岡崎市に建つ木造2階建てのオフィスの計画。
「一つの曲面がつくる多様な屋根下空間と包まれたような屋上空間」
住宅地に浮かぶ大きな1つの曲面が、下方向に様々な天井高をもつワンルームを作り出し、上方向にお皿の中のにいるように柔らかく包み込む屋上空間を作り出す。
密集地にあって開放的な内部空間と適度にプライバシーが確保された屋上空間とを同時に確保する。
「曲面屋根とテンション材に掛かる変容する応力」
多角形構造とし仕上げ材で曲面をつくるでもなく、曲げ集成材や曲げ鉄骨材で曲面をつくるでもない、
非常に薄く偏平した断面のフラット材を使用した重力とテンションによって曲面を生成する新たな曲面の作り方。
重力のみのたわみだけで屋根を形作ると人が乗ったときの積載荷重に応じて建築が変形していき崩壊してしまうため、
想定最大積載荷重分をあらかじめ引っ張ってたわませて固定するプレテンション構造にした。
屋上に人が乗っていくと下部の垂直柱に掛かるテンションは徐々に減っていき、最大150人(40kg/㎡)に達するまで圧縮が掛からないように設計されている。
屋上の積載荷重と引張テンションが、時によって差し引きしながら、建築の形状を一定に保っている。
屋根の上を歩いたときのふわふわとした微小な振動がそこに働くテンションを実感させる。
「空間をやわらかく規定するランダムな極小径柱」
ワンルーム内にランダムに配された極小径の木テンション材は家具の配置やスペースのまとまり、動線と同時並行で設計されている。
柱のように見えるが、触ったときの振動がそこに働く大きなテンションを実感させる。
通常の木構造とは異なった構造システムを採用しているが、テンション材に木材を採用し視覚的に普段の木造に近づいたことで居場所としての空間性がでてきたのではないかと思っている。
「精密な木材 - 集成材のラミナ配列を設計する」
使用される約1000本のラミナ材を積載荷重試験して得られた個々のデータを基に、
ラミナの配列を設計することで12本の「精密な木材」の梁を製作し、本計画の応力図に合致した木構造を実現した。

建築設計実務:山王のオフィス

外観

建築設計実務:山王のオフィス

内観

担当科目

基礎製図Ⅰ、建築設計演習Ⅰ、建築設計演習Ⅱ、建築設計演習Ⅲ、建築計画Ⅱ、建築CADⅡ、建築CG、卒業研究Ⅰ、卒業研究Ⅱ、インテリア論など

部活顧問

建築競技部(ACC) 部活顧問
建築学生コンペのスケジュール・指導を行う。
2023年度後期:GLコンペティションにて最終17組に選出。

部活顧問

部活顧問

愛知産業大学 造形学研究所報2023年19号:建築における兼用性に関する研究 -構造・設備・空間・家具の統合-

実例分析を通して、構造体がそれ以外の働きを兼用するということは、構造体が密実で人の視線および身体の侵入を妨げているとき、若しくは構造体を中空化してはいるがやはり視線と身体の侵入を妨げているときに、その部分をうまく有効利用しようとする場面で建築表現として顕在化していると思われる。それは空間を構造/プラン/設備/用途といった複数の水準を横断して性格づけ、空間の意味をより多義的で魅力あるものとしていると考えられる。

愛知産業大学 造形学研究所報2023年19号:赤坂の小さな増築小屋

敷地は愛知県豊川市の旧東海道にほど近く、現東海道( 国道1 号線)と旧東海道に挟まれた場所に位置する約1 3 5 0 ㎡ の敷地。敷地の背後には標高3 0 0 m 程の山々が控え、旧東海道の名残からか瓦屋根の住宅が多く建ち並ぶ。 計画が始まった当初は畑と母屋の間にもう一軒の住宅が存在していたが、約5 年前に取り壊されたことで 敷地に大きな空き地が生まれた。
さらに、周辺が段差によって囲まれていることでがらんどうな印象を与え、そのままでは活用しづらい場所であっ た。
最初にお話を頂いたのは実に8 年前にさかのぼる。 既存の母屋の構造が束石に束が乗っているだけの状態であったことから改修を希望されていたことと、既存の 母屋が改修や増築を繰り返すことで現在にまで住み継がれているという経緯から既存改修を方針として進めていた。
検討を進める中で普段の私生活や近隣住人との関わり方、環境や母屋以外の敷地に複数建つ建屋の使われ方を見ていると、敷地の一部は周辺の人が利用できるスペースとして貸し出され、レベル差のあるご近 所さんとは塀越しにしばしば立ち話が行われる。
母屋には青々とした庭が残され仏間や風通しの良い居間、野菜を干す場所なんてところもある。
農器具庫には畑で使用するトラクター等がしまわれ、蔵では畑でとれた野菜やお米を保管しておく保冷庫が おかれる。つまり、広大な敷地をまちのように行き来し自由に生活を送る姿が見て取れたのである。
そこで、現在大きく開いている空き地に、母屋、畑、蔵などまちの要素を繋ぐような休憩小屋として建築 することで、それぞれの要素に関係を持ちやすい場所に新しく住まうのはどうかと考えた。
その際、新築部は現在必要とされる最小限の面積に抑えて建築し、母屋は取り壊さず離れとして残すこと で、母屋がある事ではぐくまれている豊かな関係や場所を残すこととした。

愛知産業大学 造形学研究所報2023年19号:赤坂の小さな増築小屋

俯瞰外観

愛知産業大学 造形学研究所報2023年19号:赤坂の小さな増築小屋

配置平面図

社会活動

2013あいちトリエンナーレ インスタレーション「Roof」。市民ボランティアとの共同制作

2013年に岡崎市のデパート「シビコ」の屋上を展示会場としたインスタレーション。
製作は市民ボランティアの方々と共同で作り上げた。
また会期中は展示物の樹脂椅子をブローチとして制作する市民ワークショップを行った。
白と光沢が起こす自然光の反射と拡散による3500㎡のホワイトアウト現象。
下階からアプローチすると屋上の圧倒的な天空光により視界がほとんど開けず、しばらくするとうっすらと場所が認識できるようになる。
そこに架かる細さ0.27mmの白いミクロな素材でつくられた無重力で透明な屋根。
強い風に呼応しゆっくりと上下しながら、刻々と変化する白い雲と青い空を背景にし浮かび上がっては消える。
頭上2.5mに小さくて大きい水平面がつくられている。
素材のスケールが小さすぎて全体を一度に認識することができないが、広大な屋上を歩き回り設置台に登ったり椅子に座ったりして頭上を確認することで、その全体像がイメージの中に統合される。
曇りの日や晴天の日など天候によって空の背景が変わり、また天空照度によるホワイトアウトの強弱も変わるため、消えたり浮かび上がったり存在感が日々変化している。

2013あいちトリエンナーレ インスタレーション「Roof」。市民ボランティアとの共同制作

展示風景

2013あいちトリエンナーレ インスタレーション「Roof」。市民ボランティアとの共同制作

展示制作作業

研究支援室の連絡先情報

0564-48-4801 kenkyu@asu.ac.jp